平成27年2月定例会(2月26日)

気候変動がもたらす豪雨災害へ備えたまちづくりについて


◆(金庭宜雄君) 議長のお許しをいただきましたので、質問をさせていただきます。  
名古屋市は、これまで物づくり産業を中心に、経済的にも物理的にも常に日本の中心的な牽引力としての役割を担ってまいりました。今後は、これまで培ってきた多くの資産をさらに生かした未来志向のまちづくりが実行されることにより、名古屋の持つさまざまな魅力が日本のみならず世界中に発信されていくことが期待されるところであります。  
魅力ある名古屋のまちづくりに向けての取り組みはさまざまな観点からの検討がありますが、何よりもまずは安心して住むことができる名古屋であるということが重要なファクターであります。この視点に立ち、今回は、気候変動がもたらす豪雨災害へ備えたまちづくりについて質問をさせていただきます。  
昨今、気候変動による異常気象が世界各地で発生し、甚大な被害をもたらしております。海水温が上昇し、夏の暖かい空気により水蒸気となり、上昇気流により雨雲が発生、やがて豪雨を降らせるほどの強力な雨雲に発達し、各地に水害をもたらしているとのメカニズムが解明されているところであります。  
また、局地的な豪雨水害にとどまらず、暖かい海水が台風のエネルギーをさらに巨大化させ、最大風速60メートルを超えるスーパー台風に発達させる原因も気候変動が作用しているとの指摘もあります。  
2013年、フィリピンを襲ったスーパー台風ハイエンは約7,000人の犠牲者を出し、2007年、バングラデシュでは、スーパー台風シドルにより約900万人が被災しております。スーパー台風は、伊勢湾台風以後、今のところ東海地方には上陸していませんが、今後、絶対に来ないという保証はどこにもありません。  
これまで述べたように、強力な雨雲の発生による豪雨災害がここ数年にわたり日本各地で起きており、名古屋市内でも毎年のように豪雨による被害が発生しております。昨年8月には、守山区において局地的な豪雨による床上・床下浸水被害が発生。JR中央線の新守山駅のアンダーパスが浸水し、自家用車が水没するなどの被害を及ぼしたことは記憶に新しいところであります。  
大自然のエネルギーにあらがうことは困難ではありますが、伊勢湾台風や東海豪雨など、名古屋がこれまでに被災を経験し得られた教訓を生かした施策により、市民の生命と財産と愛する名古屋を今後、しっかりと守っていくことは大変に重要であると思います。これを踏まえ、各局に順次質問をさせていただきます。  
直近の4年間に、本市において災害対策本部を設置し、非常配備をとった事象のうち、大雨洪水警報のレベルとなる時間雨量50ミリ以上を記録した豪雨の発生状況を調べてみますと、平成23年には3回発生しており、9月の台風15号による水害では、庄内川の越水、破堤により守山区と北区の住民の一部避難指示が出され、自衛隊に対し災害派遣要請も出されました。  
被害状況は、死者3名、負傷者4名といった人的被害に加え、住宅の一部損壊4棟、床上浸水61棟、床下浸水317棟に及ぶ豪雨水害となったことは今でも記憶に焼きついております。翌平成24年には、住宅や人的被害などに及んだ水害が2回発生、翌25年にも同じく2回、昨年発生した時間当たり100ミリを超える大雨による被害については、先ほど申し上げたとおりであります。  
このように、気候変動がもたらす大雨が毎年名古屋のまちを襲っているのが現状であり、夏が来るたびに、ことしは大丈夫だろうかと心配しているのは私1人だけではないと思います。  
そこで、消防長にお尋ねいたします。大雨による水害が危惧される場合の住民避難の方法は、上方への避難が鉄則であります。この場合、住民が自宅以外の上方避難の選択肢として、自家用車とともに近隣の大型スーパーなどへの一時避難なども考えられます。災害に強いまちづくりを推進する観点から、地域における住民と事業者が自助及び共助をふだんから進めておくことは重要であると考えますが、事業者も含めた地域の協力体制の醸成をどのように図っていくのか、答弁を求めます。  
次に、名古屋市では、国や県など複数の河川管理者により河川整備計画に基づいた整備が進められているところであります。本市が河川管理をしている堀川や山崎川などの治水安全度を図る上で、河川整備の取り組み状況と時間雨量63ミリに対する整備率と今後の対応について、緑政土木局長の答弁を求めます。  
次に、平成12年の東海豪雨以降、本市では、緊急雨水整備事業を計画的に推進しております。現時点における全体事業の進捗率と事業の完了予定、整備事業によるこれまでの効果について、上下水道局長にお尋ねいたします。  
また、市民や企業など、民間における雨水流出抑制などに向けた取り組みを並行して行っていただくことは、自助、共助の観点からも大変重要であると考えます。市民、企業への取り組みをお願いする広報や学校訪問による啓発への取り組みについて、あわせて上下水道局長にお尋ねいたします。  
気候変動によりもたらされる災害は、私たち名古屋市民の生活にとって脅威となってきていることは、先ほど来述べたとおりであります。本市では、環境首都なごやを目指す指針の一つとして、水の環復活2050なごや戦略を示していますが、自然環境の変化がもたらす社会生活への影響が危惧される昨今の状況を踏まえ、環境局が目指す方針とこれまでの取り組み及び今後の取り組みについて、環境局長にお尋ねし、私の第1回目の質問といたします。(拍手)

◎消防長(堀場和夫君) 避難時における事業者との協力体制づくりについて、消防局にお尋ねをいただきました。  
本市におきましては、伊勢湾台風や東海豪雨、昨今の異常気象により頻発する集中豪雨などの災害を経験しているために、地域における住民や事業所の防災意識は高いものの、今後、さらなる自助力・共助力の強化のためには、地域防災力の向上を図っていく必要があると考えております。  
地域の協力体制の醸成を図ることを目指しました地域における住民と事業所の信頼関係の構築につきましては、日ごろから顔の見える関係づくりが重要となってまいります。そのため、地域に密着している区役所や消防署がパイプ役となり、住民や事業所へ防災訓練や防災講習会への参加や協力を促し、両者が連携できるような環境づくりの場を提供できるよう取り組んでいるところでございます。  
今後とも、地域からの意見や要望に対しましてきめ細かく対応するなど、地域住民と事業者のきずなづくりを進め、地域が一丸となって災害に強いまちづくりに取り組んでいけるよう働きかけてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。  
以上でございます。

◎緑政土木局長(黒川和博君) 緑政土木局に対しまして、河川の整備状況についてお尋ねをいただきました。  
本市におきましては、平成19年から平成23年にかけて、河川管理権限の移譲を愛知県から受け、現在は河川管理者として河川整備計画を策定し、治水対策に取り組んでいるところでございます。  
河川整備の目的は、川の流下能力を増加させて流域の雨水排除を進め、治水安全度を高めることにあり、とりわけ市中心部を流れる堀川、山崎川について重点的な整備を行っております。  
具体的な整備内容といたしましては、堀川につきましては護岸改築及び河床掘削を、山崎川につきましては橋梁改築や護岸改築などをそれぞれ実施しております。計画目標としております1時間63ミリの降雨規模に対する整備率といたしましては、平成25年度末時点で堀川が約35%、山崎川は約61%となっております。  
今後につきましても、引き続き河川整備計画に基づく河川整備を進め、着実に治水安全度を引き上げてまいりたいと考えております。  
以上でございます。

◎上下水道局長(小林寛司君) 上下水道局には2点お尋ねをいただきました。  
まず、緊急雨水整備事業につきましては、主要施策として49カ所の雨水貯留施設の建設を計画しております。平成25年度末現在で、このうち38カ所の整備が完了し、その進捗率は約78%となっております。名古屋駅周辺を含めた広域的な対策にことしから着手をいたしますが、これを含めまして、平成33年度までに概成させることを目指しております。  
この事業は、原則、1時間60ミリの降雨に対応する施設整備を行うことにより、東海豪雨時に記録いたしました名古屋地方気象台における過去最大1時間97ミリの降雨に対し、床上浸水のおおむね解消を目指しております。事業効果の一例として、平成24年に南区を中心とする局所的な豪雨が発生をいたしました。南区で1時間最大98.5ミリの降雨を記録いたしましたが、既に事業がおおむね完了しておりました南区では、床下浸水の被害はありましたものの、床上浸水の被害は報告をされませんでした。  
このことからも、これまでの浸水対策に一定の効果があったものと、このように判断をしております。  
次に、雨水流出抑制の普及啓発につきましては、昭和62年に名古屋市雨水流出抑制推進会議を設置し、全庁的に取り組んできており、機会を捉えてのリーフレットの配布や市域のどのあたりが雨水浸透に適しているかを示す浸透適地マップを公表するなど、PRの強化に努めてまいりました。  
これに対する成果といたしましては、企業による開発行為等において把握できているだけでも、推進会議を設置した昭和62年から平成25年度末までに1,400カ所ほどの貯留浸透施設を設置していただいており、今後もこうした取り組みを積極的に進めてまいりたいと、このように考えております。  
また、当局では、職員が小学校に出向いて上下水道の仕組みについて講義を行います訪問事業を実施しておりますが、自助、共助による浸水対策について、講義内容を今後、一層充実させるとともに、より多くの小学校で実施できる体制を整備し、自助、共助の輪を広げてまいりたいと考えております。  
以上でございます。

◎環境局長(西村幸久君) 水の環復活2050なごや戦略により目指す方針、これまでの取り組み及び今後の取り組みにつきまして、環境局にお尋ねをいただきました。  
近年、都市化に伴う水循環の変化が湧き水の量や晴天時の河川流量の減少、ヒートアイランド現象の助長、水質の汚濁、河川の氾濫や洪水の発生など、都市が抱える問題の一因になっております。  
このような状況を踏まえ、人の活動との調和を考えながら水循環の機能回復することでこれらの問題を解決し、豊かな水の環が支える環境首都なごやの実現を目指すために戦略を策定いたしました。  
この戦略におきましては、雨水の浸透または貯留、緑地の保全などの取り組みを進めることにより、蒸発散量を確保して気候を穏やかにしたり、地下水を豊かにするとともに、直接流出する雨水の量を減らして水害の危険を減らすことを目指しております。  
これまで本市では、市民、学識経験者、行政から成るなごや水の環復活推進協議会を設け、各局の施策を水循環の視点から整理し、緑、まちづくりなど、各分野の個別計画に水循環の回復に関する考え方を盛り込んでまいりました。あわせまして、市民に対し水循環の重要性を理解していただけるよう働きかけてまいりましたが、市政アンケートの結果では、水循環に対する認知度の低さ、特に、若者世代が低いことがわかりました。  
そのため、環境局といたしましては、これまでの取り組みに加えまして、次世代を担う小中学生、高校生、大学生を対象とした出前講座の実施など、対象となる方々に合わせたより効果的な啓発活動に努めてまいります。また、湧き水を活用した啓発事業など、市民が水循環の大切さを実感できるような取り組みを進めてまいります。  
このような水循環の回復への取り組みを通じて、水循環を意識した行動の輪が市民生活及び事業活動の中で広がるよう努めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  
以上でございます。

◆(金庭宜雄君) それぞれ御答弁いただきましてありがとうございました。  
初めに、要望をつけさせていただきたいと思います。  
消防局のほうですけれども、大雨の場合は、避難行動は上、上方へ避難というのが鉄則なんですけれども、例えば、いざというときの心構えとして、地元にある大型店舗などへの一時避難をさせてもらえるような、そういう連携を事前にとっておくということは、地域住民にとっては非常に大事なことだというふうに思います。地域住民の方から事業者への調整の相談、こういったことがありましたときには積極的に対応していただけるように要望をしておきます。  
それから、上下水道局ですけれども、雨水流出抑制施策の中心施策として緊急雨水整備事業、これは、平成33年の完了を目途に現在、進捗率が78%であるという答弁をいただきました。今後も着実に進めていただきたいと思います。ようやくリニア中央新幹線の通るコースも決まりましたので、そちらの雨水貯留施設のほうも進めていただきまして、33年度にはきちっと完了していただくことを要望しておきたいと思います。  
このほかにも、浸透ますの設置であるとか、それから、透水性舗装の拡大なんかは緑政土木さんのほうによる対策が進められているところでございます。  
これに加えて、市民個人個人による雨水流出抑制策として、浸透トレンチ、それから浸透ます、こういったものを自宅に設置している御家庭もございます。これは、ますなどの側面であるとか、それから、底面に穴をあけたもので、穴を通じて地中へと浸透させる仕組みだというふうになっています。雨を下水管に直接流さないことによって、下水道施設や河川への負担を軽減するというこの取り組みは、まさしく市民の共助の精神でございます。  
平成25年、名古屋市内では、戸建ての住宅が約8,300戸新築されたそうであります。ここ10年間はほぼ毎年同じような戸数の住宅が新築されておりまして、仮に、この半数の4,000戸ぐらいが同様の浸透設備を備えたとしますと、これはこれで大きな雨水抑制効果が見込まれるということになります。  
現在も市民へ設置のお願いを進めている中ではございますが、例えば、設置に対する助成金という方法で、これによってさらなる促進が図られることも見込まれるわけでございますので、名古屋市も積極的にこの助成金制度を検討すべきであるというふうに私は思います。実は、これは愛知県内だけでも、岡崎市であるとか豊橋市を初め、28市8町で助成金による促進策を推進しているところであります。今後の施策展開として要望をしておきたいと思います。  
さて、これまで気候変動がもたらす豪雨災害へ備えた名古屋のまちづくりについて質問と要望をさせていただいたわけでございますが、市長さんの現状認識と豪雨水害へ備えたまちづくりへの決意をお聞かせいただきたいと思います。

◎市長(河村たかし君) 御承知のように、日本最大のゼロメーター地帯ということでございまして、それと、伊勢湾台風が、わしは小学校5年生で、よう言っておりますけど、5,000人以上の方が、名古屋だけじゃないですけど、亡くなられたということで、よっぽど気をつけないかぬということですけど、根本は、この間、津波の予想で1000年に一度来るか来ないかという想定外を含めた想定内のシミュレーションでですけど、その場合でも伊勢湾台風より実は30センチ下なんですよね。ただ、それは地震がありませんので、津波の場合は地震が来ますので、30センチ下であっても堤防が崩れますとだめですけど。  
だから、基本は、伊勢湾台風がもう一回来たとして、一滴も堤防の中に水を入れないというような強い覚悟を持っておけば、一応1000年に一度はもつということで、この間、名港管理組合にそう言っておって、大丈夫かと言ったら、大丈夫と言っていましたけどね。(「本当か、そんなもの」と呼ぶ者あり)と言っておったということが事実でございます。安心はしておっていかぬけど、しかし、具体的なことからすれば、僕は、伊勢湾台風が来たときに絶対に水を入れない。(「堤防だって大きな工事だぞ」と呼ぶ者あり)  
それから、もう一個は、今も坂野さんが言ってござったように、堤防ですわね。川がありまして、こっちのほうは、ほんだで、やっぱり川のほうの補強とかしゅんせつとかいろいろあると思いますけど、やっぱり今期待しておるのは、今進んでいますけど、地域の災害の歴史を、やっぱり思わぬものが来ますので、とにかく思わぬものが。だで、それは多分1,000年とか2,000年さかのぼって何かあったはずですので、これを今、古文書やなんか、鶴舞図書館にあるやつやなんかを全部検索してやっておりますので、これは皆さん、こんなことがあったのかということがわかると思いますので、期待していただいて、そんなこと期待することじゃないけど、なるべく早く報告できたらいいなと、そんなふうに思っております。

◆(金庭宜雄君) 過去の歴史をきちんと学ぶということは非常に重要でございますし、市長さんが今おっしゃったように、伊勢湾台風の経験なんかもございます。そういう過去にないスーパー台風と言われるものがまた名古屋を襲うということについてのことも御決意をお聞きしました。  
気候変動で雨雲がどんどん湧き起こって、夏はそういう大雨が局所的に降りやすいということは、これはもう避けられない事実でございますので、そういうことについてもしっかりと安全性を高めていくということに市長さんみずからが先頭に立って頑張っていただきたいというふうに思います。  
我々議員は--議員の大半はと言ったほうがいいかもしれませんけれども、毎日のように市民の皆さんの中に分け入って税金の使い道に対しての市民の皆さんの要望や御意見といったものをいただいて、この議会に持ち込んで、このように質問の場をいただいて登壇をしておるわけでございます。  
最近、特に多い御相談が、この今の大雨に対する相談であります。市民の皆さんから--これは市民の皆さんがおっしゃったんですよ、市民の皆さんからは、大雨が降ると不安でしようがない、名古屋市は財政状況が厳しい厳しいと言っているけれども、1,000メートルタワーや汽車ぽっぽとかに使う税金があるなら、真っ先に私たちが安心して住める名古屋にしてちょうだい、河村さんに言っておいてという声が今は圧倒的に多いんですよ、市長。安心して住むことができることは生活の第一優先であります。  
名古屋市が災害に強く安全に暮らせるまちであれば、名古屋のまちの魅力として他都市と比較しても強みとなります。その上でおもしろいまち名古屋の展開もあると思います。  
災害対策は地味な施策で、派手好きな市長さんにはおもしろくないかもしれません。地味なところで多くの職員が名古屋の安全・安心のために限られた予算の中で苦労し、汗をかいているのも事実であります。市長の全ての力を結集して災害に立ち向かっていかなければならないと考えておりますとの言葉どおりに、今後のまちづくりを進める根本精神の柱としていただきますよう心から願いまして、私の質問を終了といたします。ありがとうございました。(拍手)