平成18年9月定例会(9月26日)

藤前干潟の海外湿地提携について

 ア 海外湿地提携の意義   ⅰ 提携に向けてのこれまでの経緯   ⅱ 湿地提携先と提携の内容  イ 産業未来博物館構想の推進

◆(こんばのぶお君) お許しをいただきましたので、通告に従い、質問をいたします。
 初めに、藤前干潟の海外湿地提携についてお尋ねします。
 大都市名古屋に残された貴重な自然財産ともいうべき藤前干潟は、世界に1,400カ所以上ある湿地の中でも特に重要な渡り鳥の中継地であり、鳥獣保護区として指定され、2002年11月18日、ラムサール条約に登録されました。この藤前干潟は、シギ・チドリ類の東アジア-オーストラリア間の渡来ルートの中継地となっています。春、秋の渡りの時期や越冬期にはシギ・チドリ類が数多く渡来して、えさをついばみ、休息をするその数は日本最大規模を記録しております。また、冬には、ロシア極東、アラスカなどから多くのカモ類が渡来し、越冬しています。そのほかにも、サギ類、カモメ類、ワシタカ類も数多く生息し、中にはスグロカモメやハヤブサなどの希少種も含まれております。
 これまでに、松原市長さんは藤前干潟についてこう述べられております。ラムサール条約登録は終着点ではなく、むしろ出発点として、干潟の保全、活用を進めてまいりたい、そして、環境首都なごやのシンボルとして広くアピールしてまいりたいと。私も全く同感であります。松原市長さんの言われる干潟の保全と活用については、海外との湿地提携を図ることは最も有効な手法であると思います。
 そこで、環境局長にお尋ねいたします。名古屋市が参加しております東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワークに参加された湿地の所在する都市を中心に、提携に向けた調査をこれまで進めてこられたと思いますが、海外湿地提携の意義と、提携に向けてのこれまでの経緯、具体的な湿地提携先や提携の内容、そして、今後の予定について的確なる御答弁を願います。
 次に、産業未来博物館構想の推進についてお尋ねします。
 古くから日本の物づくりを支え、リードしてきたこの地域には、多様な産業技術が集積されています。私も物づくりの現場を訪れることがありますが、そのたびに圧倒的な迫力や繊細さに驚かされることも数多くあります。物づくりにかけた情熱と英知が形になる。そして、それに触れたとき、人は感動を覚えます。私が子供のころ、東京オリンピックを契機に整備された東海道新幹線に初めて乗ったとき、その速さと楽しさに感動し、科学館に行くと必ずひかり号の運転席の模型に乗っていたことを今でも忘れることができません。
 本市では、名古屋の大きな特色であるこの物づくり文化を継承するとともに、新たな町の魅力として発信していこうという産業技術未来博物館の構想を進めています。その検討対象地が、このほど名古屋港の金城ふ頭内の交流厚生用地地区と示されました。構想策定に向け、いろいろな意見やアイデアをいただくため、有識者で構成する懇談会においてはさまざまな意見が出されております。例えば、日本の衛星の技術は世界に誇るべきものがあり、こうしたものをJAXAと連携しながら人工衛星で地球環境のモニタリングをしてはどうかといった、他の機関や団体などとの連携を図るといったような提案もありました。また、示された地区についてもさまざまな意見が出されております。
 しかし、どんなにすばらしく夢あふれる事業であっても、事箱物と言われるものに関しては、かかる事業費が一体どれくらいの規模になるのかという点が市民の関心事であり、また、最大の課題であると思います。この事業を展開していくに際しては、土地の一体的利用や既設建物の改築などといったことを含め、柔軟な発想で進めていくことが必要ではないかと考えます。
 構想を展開していく用地の確保については、用地の交換、相互の用地の無償による相互利用、または市所有地の有効活用などといったことが考えられますが、いずれにしましても、あらゆる知恵を出し合って初期投資を極力少なくし、事業全体の効率化を図っていくことが必要かつ大変に重要であります。こうしたことが結果的に参加企業などの経費負担の軽減にもつながり、さらにはより魅力ある事業展開が図られるのではないかと考えます。そういったあらゆる知恵を凝らす姿勢や努力がこの構想の実現には最も不可欠であり、市民理解の進展につながるものであると確信するものであります。
 これに対しての市の見解について、総務局長にお尋ねいたします。
 また、産業技術未来博物館の構想検討対象地である金城ふ頭は、先ほど、海外との湿地提携についてお尋ねしたラムサール条約の登録湿地である藤前干潟の近接地であります。懇談会の議論の中でも、水の持つ魅力や水際との連携や活用に関していろいろな意見が出され、議論がなされましたが、この地域はまさしく古くから水にかかわりの深い地域でもあります。事業の展開を図る上で、国際的にも知名度の高い藤前干潟との何らかの連携を図っていくことが必要ではないかと考えますが、本市としてはこういったことについてどのように考えているのかあわせてお尋ねし、私の第1回目の質問といたします。(拍手)

◎環境局長(大井治夫君) 藤前干潟の海外湿地提携について、数点のお尋ねをいただきました。
 まず、海外湿地提携の意義でございますけれども、藤前干潟を保全、活用し、環境首都なごやのシンボルといたしまして広くアピールしていくためには、そういった観点から、平成16年度に東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワークに参加いたしまして、情報交流などを図ってまいったところでございます。
 藤前干潟をより効果的に保全、活用していくためには、海外の都市との湿地提携により、情報交流や人的交流をさらに進めることが大変有意義であると考えております。また、これは2010年に誘致したいということで頑張っております第10回生物多様性条約締約国会議の名古屋への誘致機運の盛り上げにも大きく貢献するものと考えておるところでございます。
 これまでの経緯でございますけれども、海外湿地提携につきましては、平成16年度より、藤前干潟を訪れるシギ・チドリ類の渡来地であるオーストラリアなどの湿地の中から、ふさわしいと思われる候補地を調査してまいったところでございます。
 次に、候補地の絞り込みでございますけれども、こうした候補地の中で、市民による湿地の保全、活用が盛んであるとともに、本市との湿地提携に前向きな点から、スワンベイ干潟を初め複数のラムサール条約登録湿地を有しますオーストラリア・ビクトリア州のジロング市に絞り込んだところでございます。
 このジロング市の人口は約20万人でございますが、ビクトリア州内では2番目に大きい都市でございまして、州都メルボルンからの交通の便もよいというふうに聞いております。また、自動車等の製造業が盛んな港湾都市としての一面を持ちながら、豊かな自然環境にも恵まれております。こうしたことから、ジロング市と湿地提携について協議を進めてまいりたいというふうに考えております。
 次に、湿地提携の内容でございますけれども、内容といたしましては、情報交流と人的交流の両面で協議を進めたいというふうに考えております。例えば、インターネット回線を利用し、双方の干潟や湿地の状況をリアルタイムでモニタリングできるようにするなどの情報交流や、次世代を担う小中学校の児童生徒やNPOの方々をジロング市に派遣し、現地での交流活動を通して、藤前干潟の一層の保全、活用、ひいては環境首都なごやを支える人材を育成するなどの人的交流を進めてはどうかといった考えを持っております。
 今後の予定でございますけれども、今後は、ジロング市当局との交渉や湿地の現況調査、市民活動の実態調査などを行い、具体的な準備を進めてまいりたいというふうに考えております。
藤前干潟の保全活動などを行っている市民団体とも連携しながら提携内容の調整を進め、できれば平成19年度中にジロング市と湿地提携を締結し、交流事業に着手してまいりたいと考えております。よろしく御理解賜りたいと思います。

◎総務局長(鴨下乃夫君) 産業技術未来博物館構想の推進につきまして、2点のお尋ねをいただきました。
 まず、効率的な土地の活用でございます。
 産業技術未来博物館構想につきましては、金城ふ頭の交流厚生用地を中心に展開していくことを考えております。この用地内には、現在、名古屋市国際展示場を初めさまざまな施設が既に設置され、それぞれ活用されておるところでございます。構想を策定していくに当たりましては、そのような既存施設等とどう連携を図り、どのような活用方策などがあるかなども検討し、この地区全体の活性化も視野に入れていく必要があろうかと考えております。
 また、用地の確保につきましては、構想を具体的に推進していく上での第一歩でございまして、議員お示しされました用地の交換などの用地確保の手法につきましては、初期投資の軽減や今後の事業運営の効率化を図る上から効果的であると存じております。また、こうしたことが全体経費の節減につながり、企業の参加の促進や、さらには構想の魅力アップに資するものと考えられます。
 今後、構想を進めるに当たりましては、御指摘のとおり、事業の効率化はもとより、交流厚生用地を一体としてとらえて検討をしていくといったことが重要でございます。また、こうした工夫を凝らす姿勢が、この構想に対します市民の理解を深めることにつながるものと考えております。
 次に、藤前干潟と産業技術未来博物館構想との連携についてお尋ねをいただきました。
 構想の検討対象地でございます金城ふ頭は、本市の環境問題への取り組みのシンボルともなってございますラムサール条約登録湿地でございます藤前干潟に近いところに位置してございます。モノづくり文化交流懇談会におきましては、この構想の重要な課題といたしまして、水際との連携が提起されておりまして、水をキーワードにして、藤前干潟との連携を念頭に置きながら構想を組み立てていくことは、まことに意義深いことだとも思っております。
 また、懇談会の中では、この地域の持つ景観と一体となった施設や、水や自然エネルギーを切り口にした持続可能な社会のあり方の検討、さらには、水に関連する各種の実験、体験ができる場の創出などといった具体的な意見やアイデアも出されておりまして、今後、鋭意検討を進めてまいりたいと思っております。
 また、構想を進めていく上で、市民、NPO、企業の方々とも連携を図り、協働でシンポジウムやイベント等を開催するなど、ソフト面の取り組みが重要であるとも考えております。
 御質問の冒頭に、物づくりにかけた情熱と英知が形になり、人はそれに触れたときに感動するとのお話がございましたが、まさにそうした感動は次代を担う子供たちに夢を与え、未来を創造させることにつながるものと思います。
 産業技術未来博物館構想は、産業技術資産を保存、展示し、物づくり文化を発信、継承し、産業観光・産業振興を図るとともに、将来に向けた人材育成も大きな目的でございます。本市といたしましては、構想の実現に向けまして、御指摘の点などを十分に勘案しながら真摯に取り組んでまいりたいと考えておりますので、御理解賜りたいと存じます。
 以上でございます。

◆(こんばのぶお君) それぞれ御答弁いただきまして、ありがとうございました。
 今回の質問のポイントは、これまでの名古屋、つまり藤前干潟や物づくり文化の名古屋をどのようにとらえて、これからの名古屋にどう継承していくかという点です。
 藤前干潟の海外湿地提携については、オーストラリアのジロング市との提携を目指すとの具体的な答弁をいただきました。情報交流と人的交流の両面での協議を進めるとのことですが、この海外湿地提携の機会は、環境首都なごやを目指しゆく本市の姿勢を国内外に示す絶好のチャンスととらえ、「愛・地球博」で芽生え、生まれた地球環境保護に対する市民意識の醸成を図っていく上でも重要であると考えます。
 さらに、今後、人的交流を深めていく中で、次代の名古屋を担う子供たちが交流に参加するということは、言いかえれば、外交の民間大使としての人材育成の場となります。これは大変に意義深い交流事業であり、大いに期待するものであります。今後の締結に向け、しっかりと取り組んでいただくことを要望しておきます。
 また、産業技術未来博物館構想については、先ほども申し上げましたが、大変に厳しい財政状況であるわけですから、事業全体の効率化や初期投資の軽減化を大前提とすることは必須条件であると念頭に置いた上で、あらゆる知恵を糾合し、検討すべきであると申し上げておきます。
 私が以前民間企業にいたとき、ある大企業の管理者の方にいつも言われていた言葉があります。それは、納期は守って当たり前、品質はよいのが当たり前、あとはどうしたらコストを下げることができるかだよ、ここに知恵の要諦があるんだということでした。お金をかけることは簡単です。しかし、お金をかけなくとも、いかにすばらしい物づくりができるかということに知恵をめぐらすことが重要であるとの先人の教えです。つまり、知恵と心の豊かさと夢をいっぱい詰め込んだ、低コストでありながらどこにも負けない高品質、これが名古屋の物づくりの伝統であります。産業技術未来博物館構想を推進するのであれば、まさしくこの伝統を継承すべきであると考えます。
 「愛・地球博」が閉幕してちょうど1年が経過した今、本格的なポスト万博についてどう取り組んでいくのかは、名古屋市の重大な課題であります。これらを総合的に検討した上で、名古屋の物づくり文化の発信、継承の拠点から、未来に向けて大いなる夢と希望を抱いた人材の創出が図られることを待望し、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)