◆(こんばのぶお君) お許しをいただきましたので、ESCO事業の導入について質問いたします。
今、名古屋市は環境首都の実現を目指し、環境への負荷軽減の取り組みを全市的に呼びかけております。平成13年には市役所庁舎においてISO14001を取得し、環境マネジメントの運用を行っています。また、冷房設定温度を28度とするなどのエコ・スタイル運動の展開、市民との協働によるスイッチオフ運動の実施、ごみの減量作戦など、省資源、省エネルギーへの機運も市民との協働の中から次第に高まりを見せています。また、第2次名古屋市庁内環境保全率先行動計画、いわゆるなごやエコ・あくしょんを平成14年度から今年度までの4年間にわたり実施しているところであります。国においては省エネルギー法に基づく法的措置などにより、省エネルギーへの取り組みを支援強化し、推進しているところであります。
こうした中、新しい省エネルギーサービス事業としてESCO事業が1990年代後半から国の補助制度として推進導入されています。ESCOとは、エナジー・サービス・カンパニーの頭文字をとった名称です。ESCO事業とは、ビルや工場など現在稼働している設備を、民間のノウハウを活用して、負荷をかけることなく高効率の節電、節水、省エネルギー化をもたらす新しい設備に改修する事業です。これは、設備更新にかかる初期投資がなく、省エネルギー化と維持管理の低減を図ることが同時にできる事業手法です。また、地球温暖化対策の一環としての効果も大きく、大変期待されている事業です。省エネルギーを確実に実現していくと同時に、光熱水費を大幅に削減できることから、ESCO事業を公共施設に積極的に導入している自治体が近年増加しております。これまで大阪、東京、神奈川、兵庫、埼玉など、昨年までに36件の公共施設で導入推進され、今後さらなる採用増加が見込まれています。
地方自治体がこのESCO事業を導入している理由として、以下の四つの特徴が挙げられます。まず第1に、新たな財政負担を必要としない省エネルギー対策であるということです。かかるすべての費用である改修建設費、金利、ESCO事業者の経費を、省エネルギー改修により実現した光熱水費の削減分の中から償還していきます。このため後年度に新たな財政負担の増大を招くおそれもありません。次に、試算し、契約した省エネルギー効果をESCO事業者が保証する点であります。万が一省エネルギー効果が得られず、自治体が損失をこうむる場合には、ESCO事業者がこれを補てんするというパフォーマンス契約を結ぶのが大きな特徴です。改修工事が済んだら後は知りませんということが存在しないため、責任ある契約が担保できます。次に、事業者により省エネルギー診断に基づく改修計画から施工・運転及び維持管理など包括的なサービスが提供されるという特徴であり、自治体が維持管理する手間がありません。4点目に、省エネルギー改修による効果の計測、検証を逐次評価する手法を導入している点であります。もしこの評価を行わない単なる改修工事だけでは、次第に省エネルギー効果が低下していくことが懸念されますが、ESCO事業の場合、定期的に設備の稼働状況や効果確認が実施されるため、期待した効果を持続させることが可能であるということです。
4年前に全国の自治体で初めてESCO事業を導入した大阪府立母子保健総合医療センターの場合、築22年が経過した同施設に対し、大阪府が事業者に向けて省エネルギー率10%以上となることなどを提案条件として公募したところ、CO2削減率31.3%、省エネルギー率25.1%、光熱水費削減保証基準額年間約8200万円という提案をはじき出した事業者をESCO事業者として選定し、現在順調に稼働しています。ちなみに、エネルギー削減率25.1%とは、この場合、削減量で年間約5万ギガジュールとなり、これをわかりやすく換算してみると、原油換算で年間約1,300キロリットルの熱量削減となります。ESCO事業導入前に比べ、毎年ドラム缶6,500本分の原油を節約していることになります。一つの施設だけでこれだけ多くの削減効果を生み出しているわけです。
大阪府建築都市部にこのことを尋ねたところ、ESCO事業は稼働以来、期待した以上に毎年光熱水費を削減できているとコメントしており、続けて、年間の省エネ目標もクリアできており、大阪府としても大変に満足していると述べておられました。このコメントを裏づけるように、以降、大阪では昨年までに九つの公共施設にESCO事業を導入しています。
さて、他都市の動向を見きわめるために調べてみました。東京では板橋区役所庁舎、江東区役所庁舎、三鷹市役所庁舎で既に導入しています。来年度からは都立病院など3施設で導入を予定しています。一昨年度から病院や美術館など15の施設で省エネ診断を既に済ませており、すべての施設で改修工事を実施することで年間約7億円のコスト削減が可能になると見込んでおり、そのほかにも研究所や学校校舎など50の施設に対して、順次導入の計画があるということです。
政令指定都市では、横浜市が今年度から横浜市南部病院にESCO事業を導入します。光熱水費は年間2割の削減、CO2排出は4割削減を目指します。札幌市も今年度から市立札幌病院での導入を決定。光熱費やCO2ともに2割の削減計画で実施されます。神戸市では、既に神戸市民病院で導入され、稼働しております。
では、このESCO事業を仮に名古屋市が導入したと仮定してみるとどうなるでしょうか。市役所庁舎を例に試算してみますと、平成15年度における三つの庁舎の光熱水費の合計は年間約2億6000万円でした。単純に2割の削減目標とすると、約5200万円の経費節減ができることになります。CO2も現在より20ないし30%削減が可能となるでしょう。また、同様に市立5病院で同時に導入したと仮定するとどうでしょう。15年度の光熱水費、5病院の合計は約6億2000万円で、同様の試算を用いて置きかえると、年間約1億2400万円の削減となり、省エネルギーによる削減も同様の効果が期待できます。少々粗っぽい単純試算ではありますが、たったこれだけの施設を例にとらえてみても、環境保護と固定費の削減に絶大な効果を生み出すことは安易に予測できます。
私がこのESCO事業の調査研究を行っていたさなか、先日、愛知県の発表として、脱温暖化社会に向け、「あいち地球温暖化防止戦略」推進のもと、「省エネ診断・ESCO導入可能性調査」の現地調査を6月15日からいよいよ開始するとのニュースが飛び込んでまいりました。この調査では、施設のエネルギー消費量が大きく、ESCO事業導入の可能性のある25カ所の県有施設をピックアップして実施するとのことです。県は既に環境対策の実効性を求めて走り出しました。
翻って、環境首都を目指す名古屋市は、これら県や他都市の動向をどのようにとらえているのでしょうか。省エネルギーの実現によるCO2など温室効果ガスの削減と同時に、年間経費の大幅な削減にもつながるなど、効果や目標が明確になります。より実効性ある対策として、本市においてもESCO事業の導入を検討すべきであると考えますが、いかがでしょうか。行政みずからが多角的な視野とチャレンジ精神を持ち、CO2削減に向けたあらゆる可能性を追求し、率先して挑戦していく姿勢は、やがて民間施設への波及効果をもたらし、広く市民協働の原動力として名古屋市が名実ともに環境首都として踏み出していく大きな一歩になると確信いたします。ESCO事業の導入について、本市はどのように考えているのか、名古屋市庁内環境保全率先行動計画を所管する環境局長の答弁を求め、私の第1回目の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
◎環境局長(大井治夫君) ESCO事業の導入につきまして御質問いただきました。
本市の省エネルギー対策の現状からまず申し上げたいというふうに思っております。本市におきましては、庁内環境保全率先行動計画に基づきまして省エネルギー対策に取り組んできたところでございます。市役所庁舎の事務事業における平成15年度の電気の使用量は、平成12年度と比較いたしまして、総電力量の5.4%となる1282万キロワットアワーの削減ということになっておりまして、金額にいたしますと約1億3700万円の削減効果がございました。また、ガスの使用量につきましても総量の1.8%、32万立米の削減、金額にいたしますと約3800万円の削減効果がございました。なお、これらの削減効果をCO2の削減量に換算いたしますと、約5,500トンの削減に相当いたしております。この取り組みでは主に冷暖房運転の適正化やスイッチオフ運動など、庁舎管理や職員一人一人の省エネ行動といったソフト面を中心に一定の成果を上げてきたところでございます。
御指摘のESCO事業につきましては、従来のソフト面での対策とは異なりまして、省エネルギー改修工事を行うなどハード面での見直しも含めた包括的なサービスの提供を受けることによりまして、より大きな省エネルギー効果を生むものであり、他の自治体の施設でも導入が進められていることは御指摘のとおりでございます。また、本年5月の名古屋市の環境審議会の答申の中でも、ESCO事業等の活用により省エネルギー対策の促進を検討・実施すべきであるというふうにされております。したがいまして、今後本市といたしましては、さらに省エネルギー対策を進め、庁内環境保全率先行動計画に基づきますソフト面での対策に加えまして、ハード面での対策として有効なESCO事業の導入について、関係各局と連携を図りつつ検討を進めてまいりたいというふうに考えております。よろしく御理解賜りたいと思います。
◆(こんばのぶお君) ありがとうございました。
ただいま環境局長からESCO事業の導入について検討を進めていく旨の答弁をいただきました。これまでESCO事業を導入している自治体の一連の流れを分析しますと、検討から実施稼働までおよそ2年間の時間を要しているのが平均的なタイムテーブルです。このことから見てもわかりますように、結論が出てからすぐに稼働できないデメリットもあります。つまり、まず調査を開始してみようと決意してから、効果があらわれるのはそれから2年先なんです。したがって、この場合スピードが大切になります。御承知のとおり、エネルギー消費を削減してCO2や温室効果ガスの発生を抑制して削減していくことは、地球規模の約束事としてことし2月に京都議定書が発効となりました。松原市長の所信表明の言葉をおかりすれば、言葉ではなく今すぐ具体的な行動として実践していかなければならない。私も全く同感です。名古屋市が真っ先に220万市民の先頭に立ってどこまで真剣に取り組んでいくのか、市民はしっかりと見ています。どうか全庁的な取り組みとして連携をしっかりととっていただき、早期導入に向けての検討を進めていただきますよう強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)