平成15年6月定例会(6月26日)

教育改革への取り組みについて

 ア 学校2学期制の導入  イ 学校評議員制度の現状と今後の取り組み  ウ 高校入学準備金の導入

視覚障害者のための日常生活用具について


◆(こんばのぶお君) お許しをいただきましたので、通告に従いまして質問いたします。
 初めに、教育改革への取り組みについてお尋ねします。
 先般、文部科学省より2001年度の教育課程実施状況調査、いわゆる学力テストの報告書が発表されました。この報告書によりますと、子供の学習理解度が低下しているとの指摘が新聞報道などによってされておりました。この発表は、子供を持つ親たちの間に大変大きな反響を呼んでおります。また、全国的にも非常に関心が高い内容であります。子供たちの考える力、発想力がしっかりとはぐくまれていくのだろうかという不安、また一方では、苦手な科目、例えば算数、数学が苦手な子供は、授業が進むにつれさらに苦手意識が強くなり、よりできなくなるという問題も出ているようです。なぜそのような事態になっているのかという点については、これからの調査分析によって明らかになってくると考えます。
 子供たちが基礎学力を着実につけ、いかに学習意欲を持つことができるようにするのか、学ぶことの大切さ、おもしろさを実感できるようにするためにはどうしたらよいのか。私は、これらの課題を解決するために、新しい可能性を求めて果敢にチャレンジしていこうという気概と勇気を持った行動力を教育委員会に望むところであります。学びの原点に立脚し、これらの問題を解決すべく、今こそ真剣に取り組んでいくことが急務であると考えますが、教育長の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
 さきの中央教育審議会におきまして遠山文部科学大臣は、新しい時代の学校にあっては、より一層子供たちに豊かな心をはぐくむとともに、確かな学力を身につけさせ、保護者や国民の信頼に十分こたえることができるよう、一人一人の個性に応じ、その能力を最大限に伸ばす創意工夫に富んだ教育活動が行われることが重要であるとした上で、以下のように諮問しております。
 「初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策について」では、「年間授業時数が標準授業時数であることを一層明確にするとともに、長期休業日や学期の区分のあり方などを工夫し、年間授業日数を適切なものとすること等について、今後改善すべき点がないか御検討いただきたい」とあります。
 学期の区分のあり方については、学校2学期制の導入という方法があります。これは、現行の3学期制と授業日数も休業日数も変わることなく、授業時数の一層の確保が図れるというメリットがあります。学期が長くなることで、学校行事など教育活動全体の見直しをすることにより、子供と教師の双方にとってのメリットが挙げられます。子供にとっては、学期の途中に夏期休暇が挟まれることで、苦手な教科の補充や新たな体験に取り組めるようになるなど、主体的な学びの活性化が期待できます。教師にとっては、今までより長い時間をかけて子供の学習状況を評価することができるため、時間に追われることなく、じっくりと一人一人の学習の理解度を知ることにより、より適切な指導が可能になるなど、きめ細かな対応が期待できます。他の政令指定都市では、いち早く学校2学期制への取り組みがなされております。市内の小中学校全校で実施を始めた都市や、今年度より一部の学校で試行を始めた都市、子供たちの学びがより一層活性化することを第一目標に取り組んでいる都市など、教育改革のうねりとともに全国的に広がりを見せております。名古屋市におきましては、この学校2学期制をどのようにとらえているのか、所見を求めます。
 次に、学校評議員制度についてお尋ねします。地域住民と保護者・PTAと学校の三者がより一層の連携や相談を密にすることにより、さまざまな問題点を実態に即してよりよい解決を目指していく、まさしく地域に開かれた学校づくりを目指していくときに、前向きな意見をどんどん取り入れていこうとの学校側の姿勢を示していくことが、なかんずく学校任せの教育から地域ぐるみの教育へといった教育改革につながっていくものと考えます。これらの観点から、学校評議員制度の現状と今後の取り組みについて所見を求めます。
 次に、高校入学準備金制度についてお尋ねします。
 長期にわたる景気の低迷が続く経済状況の中で、企業の倒産を初め人員削減、賃金の大幅カットなど、多方面にわたるリストラがなされることにより、家計に与える影響は大変深刻な影を落としています。家庭においてはさまざまな知恵と血のにじむような家計のやりくりを余儀なくされ、さらに将来にわたる生活設計の見直しをせざるを得ないといった危機的状況を生んでおります。その中でも、何とか我が子の望む教育環境を守ってやりたいと願っているのは、だれ人も同じであろうと考えます。
 先日、子供の学費を確保するために、やっと働き口が見つかったとのお母さんからの御相談をいただきました。
 主人は大工です。腕のいい職人として、これまでお客さんからの信頼も厚く大変喜んでもらっておりました。仕事が順調に入ってくるときは何も心配しなくてもよかったのですが、ここ数年は不況のためか仕事があったりなかったり。仕事の受注のため、朝から晩まで営業活動に歩き回っても、最近ではここ3カ月間、全く仕事がないありさまです。4月からは息子が高校に進学しましたが、私学のため、入学金を納めるにも大変で、私の親からの借金で間に合わせました。毎月の授業料分として奨学金を借りていますが、その一部は生活費にも回っているのが現状です。ある日の朝、息子から、僕、学校やめて働きにいくわと言われ、びっくりしてしまいました。息子に思わぬ心配をかけてしまい、申しわけない気持ちで胸がいっぱいになりました。と同時に、その優しい心に感動すら覚えました。私も、この苦境を何としてでも乗り切ろうと前向きにとらえ、今月から時給700円のスーパーのパートタイマーとして働き始めました。息子も、私たちの気持ちを察してか、学校まで片道3キロの道のりを毎日自転車で元気に通ってくれています。今、私と同じような子を持つ親たちは、必死に頑張っています。甘いと思われるかもしれませんが、せめて高校に進学するときの入学金だけでも、名古屋市として何か手を差し伸べてくれるような優しい施策はないのでしょうか。
 以上が御相談の内容でした。
 このお母さんのようなケースは、決してまれなことではなく、ほかにも同様の御相談が数多く寄せられております。私は、この現状を踏まえて、子供が経済的理由に悩むことなく、安心して勉学に、文化活動やスポーツに励み、そして友人関係の構築の場としての学校に通うことができるよう、経済的な下支えの整備を急ぐべきであると強く切望します。とりわけ、入学時には入学金や教科書代、制服代など多額な費用が必要です。そうしたことから、高校入学準備金制度の導入は、これから高校進学を控えた子供さんを持つ保護者の方からも大変期待されている有用な施策であります。
 昨年11月本会議におきまして、先輩の小島議員より同様の質問がされておりますが、再度お尋ねいたします。名古屋市における高校入学準備金の早期実現、導入に踏み切るべきと考えますが、教育長の積極的な見解を求めます。
 次に、視覚障害者のための日常生活用具についてお尋ねします。
 本年4月より、障害者支援費制度が始まりました。障害者の方の自己決定を尊重して、利用者本位のサービスの提供を基本とすることにより、事業者との対等な関係に基づいてサービスを選択し、障害者みずからが契約することによって利用する仕組みとなっております。視覚障害者の方と支援費制度事業者との対等な契約関係を実現させるためには、視覚障害者の方が事業者よりサービス内容などを正確かつ十分な情報提供を受けることが重要であり、これにより選択、決定がなされなければなりません。そのためにも、自己責任による判断決定がしっかりとできるよう、ソフト面での環境整備支援が必要不可欠になってまいります。そこで、3項目に分けて健康福祉局長に質問いたします。
 第1に、現在支援費制度契約時などにおける視覚障害者の方への支援の対応はどのようになされているか、お伺いいたします。
 第2に、国の日常生活用具給付事業のメニューに活字文書読上げ装置が新たに加わったと聞きました。この装置は、説明文書の隅に印字されたコードを機械が認識し、内容文言を人間のかわりに読み上げるといったものと聞いております。この印字ソフトもパソコンで簡単に取り込めるようになっております。活字文書読上げ装置の大きさも、卓上の片隅に置けるほどのコンパクトなサイズで、使用する人が何度でも聞き直しができ、読み上げ速度も調節ができるなどという利点があります。また、視覚障害者の約9割の方々が点字が読めないと言われていることからも、まさに待望の画期的な装置であると言えます。名古屋市におきましても、視覚障害者支援として、先ほど述べましたソフト面での環境整備支援として、活字文書読上げ装置を積極的に導入すべきであると考えますが、この件につきまして見解を求めます。
 第3に、この活字文書読上げ装置が導入となった際には、サービス事業者が説明文書の隅に内容文言をコードとして一括変換したものを印字掲載することで、初めてその効果を発揮することになります。つまり、読上げ装置を持っていても、文書にコードが印字されていなければ、有効活用ができず、事業者の協力が必要不可欠であります。名古屋市として、事業者への周知対応策はどのようにお考えであるか、お伺いいたします。
 以上で、私の第1回目の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

◎教育長(加藤雄也君) 教育改革への取り組みについて、3点お尋ねをいただきました。
 1点目に、学力向上への取り組みについてでございます。
 議員御指摘のように、基礎、基本の確実な定着を図り、学習意欲を一層高めるため、わかる授業、楽しい学校を目指す取り組みを充実させていくことはとても大切なことであると考えております。これまでも教育委員会では、教育改革プログラムを定め、基礎基本の定着を図るため、すべての学校で少人数指導を実施したり、各学校の実態に応じて読書活動や、朝の時間を利用した計算や漢字の練習などの継続的な取り組みを行ったりしているところでございます。こうしたさまざまな取り組みをさらに充実発展させるため、今年度から算数など教科の指導方法を工夫改善する取り組みを学力向上パイロット事業として研究実践を進め、その成果を全市に広めてまいる予定をいたしております。
 また、本市における児童生徒の学力の状況を把握するため、本年度2学期に小学校5年生と中学校2年生を対象として、学習状況調査を実施いたしますとともに、その成果を踏まえ、指導方法や評価の工夫改善をするなど、今後の施策に生かしてまいりたいと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、21世紀をたくましく生き抜く子供たちを育てるためには、社会の変化に対応し、新たな問題に積極的にチャレンジし、創造的に解決していく力を身につけさせることが大切であり、そのためにも基礎、基本を確かな学力として培うためのさまざまな取り組みを進めてまいりたいと考えております。こうした考えを推進するため、この4月に本市の全小中学校の校長に私から直接呼びかけたところでもございますので、御理解を賜りたいと存じます。
 2点目に、2学期制の導入についてでございます。
 2学期制とは、御案内のように、4月から始まる学校の1年を夏休み、冬休みを挟んで、現在三つに分けているものを、4月から10月上旬を前期、10月中旬から3月末までを後期とする二つの学期に区分するものでございます。議員御指摘のように、現行の3学期制と授業日数も休業日数も変わることなく、授業時数をふやせるなどのメリットがあることは私どもも承知をいたしているところでございます。
 しかしながら、2学期制では、各学期の半ばに夏休み、冬休みの長期休業が挟まれることによって、学期としてのまとまりが薄れ、子供たちの学習や生活リズムが乱れるのではないかといった心配や、通知表を通して子供の評価を知る機会が減ることに対する保護者の不安などが指摘されております。また、現行の2学期は、学習や学校行事を充実させる実りの秋として最適な季節であり、この充実を図る時期を二つに区分することの是非や、中学校の進路指導に関して課題を指摘する声も聞いているところでございます。教育委員会といたしましては、他都市での実施状況を踏まえつつ、2学期制につきましては慎重に検討してまいりたいと考えているところでございますので、御理解賜りたいと存じます。
 3点目に、学校評議員制についてお尋ねをいただきました。
 学校評議員制は、議員御指摘のように、家庭や地域との連携を深め、教育活動の充実を図るとともに、地域に開かれた学校づくりを一層推進するために設けているものでございます。本年度は、昨年度から実施している学校も含めまして、小学校45校、中学校35校、養護学校1校、高等学校2校で実施をいたしております。実施した学校からは、評議員の方々からの意見を取り入れて、作品展の開催時間を延長して多くの方が夜間に鑑賞できるようにしたとか、地域で行っている節電・節水運動を子供の学習に役立てたなど、教育活動の充実を図ることができたという声を聞いているところでございます。これらの成果を踏まえ、今後も学校評議員制を全校に設置できるよう努めてまいりたいと考えておりますので、御理解賜りたいと存じます。
 次に、高校生の奨学金制度についてお尋ねをいただきました。
 この制度は、経済的に困窮する高校生の就学を支援するため、成績要件を設けず、奨学金を貸与するものでございます。一方、昨年4月より、愛知県が本市と同様の奨学金制度を創設し、高校生に対する経済的な支援制度が充実されたところでございます。また、高校入学時には、議員御指摘のとおり、入学金を初めとするさまざまな支出が重なり、教育費の負担が大きい時期であると考えております。このため、愛知県との役割分担を踏まえながら、現行の奨学金制度を見直し、御提案のありました入学準備金について、これを貸与する制度として来年度を目途に鋭意検討してまいりたいと考えておりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。
 以上でございます。

◎健康福祉局長(木村剛君) 視覚障害者の日常生活用具に関しまして、3点のお尋ねをいただきました。
 初めに、支援費制度における視覚障害者とサービス提供事業者との契約方法の現状でございますが、活字による契約書にあわせまして、点字版や録音版、こういったものの対応が行われているところでございます。今後とも支援費制度の事業者に対しまして、視覚障害者の特性に配慮するよう、引き続き指導してまいりたいと考えております。
 次に、視覚障害者用活字文書読上げ装置の導入についてでございます。国の実施要綱におきましては、平成15年度から日常生活用具の給付対象の一つとしてこの装置が追加されたところでございますが、給付についての基準額がいまだ示されていないところでございます。本市といたしましては、この基準額が明らかとなります国の通知をまって検討してまいりたいと考えているところでございます。
 最後に、支援費のサービス提供事業者への周知でございます。議員御指摘のとおり、事業者が契約書類を初めとする文書を作成するときに、コードを掲載することによりまして、初めて活字文書読上げ装置が活用できることとなるものでございます。本市が日常生活用具として支給対象といたします際には、その趣旨をサービス提供事業者へ情報提供し、この装置が十分活用されるようにしてまいりたいと考えておりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。

◆(こんばのぶお君) 御答弁ありがとうございました。
 教育改革に向けて、積極的に施策を推進しようとの前向きな行動力が市民から期待されております。次代の名古屋の子供たちをはぐくむためにも、人材育成は名古屋を見習うべきと言われるような名古屋教育ビジョンを目指していただきたいと要望いたします。
 また、視覚障害者の方への支援につきましては、活字文書読上げ装置を初め、皆さんが安心して制度を利用できるよう、どうか丁寧な対応を望みます。
 最後に、長年待望されていた高校入学準備金制度につきまして、先ほど教育長さんより、来年度をめどに制度導入を検討いただけるとの大変心強い御答弁をいただきました。これは、これから高校入学を控えた子供さんを持つお父さん、お母さんにとって大変にうれしい施策であります。財政状況の厳しい折、仮に小さく生んでも、後に大きく育てていかなければならない制度であると考えます。ぜひとも来年度よりの実施に向けて、今後半年間、しっかりと御検討いただきたいと要望いたしまして、私からの質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)